RESTORATION

1976 Ford Bronco Sport

AFTER

BEFORE

■この車について

この度、アイダホ州ナンパからやって来ました1976 Bronco Sportです。この個体はアンカットフェンダーなど、一見するとオリジナルコンディションを保った個体のように見えますが、実際には前オーナーにより何かと手を加えられており、今回は当初よりあくまでもレストアベースとしての入庫となります。まずはボディのリペイント作業から取り掛かることになるこちらのプロジェクトですが、作業が進むにつれ色々と作業項目が加わり、内容の濃いプロジェクトとなりました。手間隙は掛かりましたが、美しい仕上がりを実現できました。

  • 1976 Bronco Sportのレストアプロジェクトです。(写真右)1969 Broncoのペイント・内装のリファインも当HP内Restorationにてご紹介しております。(写真左)
  • 1969 Broncoは完全なオリジナルコンディションの個体でしたが、こちらは前オーナーが手を加えている部分があり、フルレストアとまではいかないもののそれに近い作業が必要でした。
  • 例えばこのグリルですが、オリジナルではグリルクロームの内側はシルバーなのですが、前オーナーによって少し薄めのメタリックブルーに塗られています。そしてターンシグナルレンズも1968年までの前期型に変更されています。本国では前期型の人気が高く、このようにターンシグナルグリルパッドを外し前期型レンズをチョイスしている個体をたまに見かけます。
  • 内装もステアリングコラムやコラムベゼル、ドアパネルの一部が前オーナーによってメタリックブルーに塗られています。こういった部分はすべて新品パーツを取り付け、リファインします。
  • まずはボディショップにて古いペイントの剥離作業から開始です。
  • ペイントを剥がしながらボディの状態をチェックしていき、補正が必要な箇所や補修箇所を確認します。
  • こちらは完全にペイントが剥がされたフードです。補修が必要な箇所にパテが盛られています。
  • グリル、テールゲートも同様にペイントが剥がされ、補修箇所にパテが盛られていきます。この後、フロントフェンダーやウィンドシールドフレームなどを外してインナーフェンダーやドアピラー部分などボディ内部の状態をチェックしました。
  • ボディペイントの剥離作業を進めながら、ボディ各部の点検作業を同時進行で行っておりましたが、フードとフロントフェンダーパネルを外したところ、ウィンドシールドマウントパネル、ドライバーサイドのコウルパネル、インナーフェンダー及びキックパネル、ドアピラーの一部分に残念ながら錆が発見されました。こちらはウィンドシールドマウントパネル部分です。マウント部分に錆が確認できます。
  • こちらの画像からもウィンドシールドマウントパネルとコウルパネル部分に錆が確認できます。
  • こちらはキックパネルとドアピラー部です。ドアピラーの下部にやはり錆による腐蝕が確認できます。アーリーブロンコはドライバーサイドのコウルパネルにベントボックスがあり、ベントシールの劣化などによりその部分から雨水の浸入が起こりやすく、ドライバーサイドが錆びやすい傾向があります。しかし、アーリー・ブロンコはすべてのボディパネルがパーツとして豊富に存在しているのでニューパーツへと交換することが可能です。錆が確認できた箇所はすべてのボディパネルを交換する予定です。時間とコストはかかりますが、やりがいのあるプロジェクトです。
  • 錆が発見されたインナーボディーパネルを交換していきます。
  • 左右のコウルパネルが交換されました。
  • こちらは左側のキックパネル部分です。職人の判断で錆びていた部分に当て板がリベット留めされています。しかし、仕上がりが美しくないためキックパネル自体を交換します。
  • こちらは同じく左側のキックパネル下部とドアピラー部分です。 こちらもご覧の通り、職人的には部分的な補修で済ませる算段でしたが、仕上がりにこだわりキックパネル、ドアピラー共に交換します。この部分の交換作業はスポット溶接を剥す必要があるためかなりの手間のかかる作業で、職人としては部分的な補修で…と考えがちです。しかし、それでは当店の求めているクオリティには達しません。手間のかかる作業でも妥協せずに、こちらの考えを職人さんに伝えて理解を得ることが重要です。
  • リアサイドは錆も無くすぐにでも塗装に入れる状態です。
  • ハードトップの下地処理も終了しました。
  • 錆が発見されたキックパネルとドアピラー部分の交換作業を進めています。インナーフェンダーエプロンもキックパネルとあまりにも見栄えが変わってしまうため交換することにしました。ご覧の通りピカピカです。
  • アーリー・ブロンコのボディパネル交換はご覧の通り溶接留めのため、とても手間のかかる作業です。時間とコストはかかりますが、湿度の高い日本での使用を考えると交換がベストです。根気強く作業を進めていきます。
  • こちらは交換されたドアピラー部分です。コウルパネルと合わせてフロント部分のインナーパネルはすべて新品に交換されました。
  • 左右のキックパネル・インナーフェンダーエプロンの交換が完了しました。予想以上に時間を要する作業となりました。しかし、各ボディパネルを交換することで、ボディ自体の強度も上がり、安心感が高まりました。
  • こちらはパッセンジャーサイドのキックパネル・ドアピラー部分です。ドアピラーが交換されロッカーパネルもスムージングが施されました。
  • 交換されたコウルパネルにウィンドシールドマウントが取付けられ、下地処理を終えた新品のウィンドシールドフレームが取り付けられました。
  • 70年代のクルマともなるとカラーコード通りの塗料を使って塗装してもオリジナルのボディカラーと違う色になってしまうことが多々あります。今回はオリジナルのミッドナイトブルーを忠実に再現するべく、何種類かのカラーサンプルを作成し、慎重に色味を確認しました。
  • いよいよ塗装ブースに入りました。まずは防腐処理のため、交換したインナーパネルから塗装していきます。
  • こちらは交換したドアピラーの端部です。かなりしっかりと塗装されていることが確認できます。
  • コウルパネル、ウィンドシールドマウント部分もしっかりと塗装されました。
  • ドアピラーからロッカーパネルにかけては、見える部分だけに丁寧に塗装します。
  • テールゲートの内側となる部分も同様にきれいに塗装されました。
  • 左右のフロントフェンダーパネルとドアパネルが取り付けられました。
  • 左右ドア開口部は入念にマスキングされいよいよ塗装準備が完了です。
  • 新品に交換されたウィンドシールドフレームも下地処理がなされ、サフェーサーが吹付けられました。
  • ボディがミッドナイトブルーに塗装されました。下地処理をしっかり行っていましたので、きれいに塗れています。これより磨き作業を経てクロームパーツの取り付けを行います。
  • ハードトップもウィンブルドンホワイトに塗装されました。
  • テールゲート&フードもミッドナイトブルーに塗装され、磨き作業を行います。ボディに取り付けるクロームパーツはすべて新品に交換される予定です。
  • ボディのポリッシュ作業が終わり、クロームパーツの取り付けに入りました。
  • こちらのドアウィンドウクロームをはじめ、スポーツグレード&レンジャーパッケージに採用されているウィンドウクローム類はリプロパーツが存在しないため、基本的には入手することができないパーツです。 中古品が稀に市場に出回りますがかなりの高値で取引されています。今回はオリジナルのウィンドウクロームをポリッシュして再使用します。
  • ドアミラー、ボディクモールは新品パーツに交換です。
  • スポーツグレードのグリル内側のペイントスキームは、本来シルバーとなります。しかし、職人さんの独自の判断でウィンブルドンホワイトに塗られてしまいました。オリジナルのスタイルをあくまでも追求したい旨を説明し、シルバーに塗りなおしてもらうことになりました。
  • すべてのクロームパーツの取り付けが完了し、ボディペイント作業が終了しました。通常1か月ほどで完成する作業ですが、今回はインナーボディパネルの交換作業が加わったため、約倍の時間を費やしました。
  • 深みのあるオリジナルのミッドナイトブルーを上手く再現できました。
  • エンジンルームも美しい仕上がりです。
  • フードの裏側は汚れが目立たぬよう、フラットブラックでの仕上げです。
  • すべてのボディワークを終えたミッドナイトブルー号ですが、インテリアワークに入る前にドライブトレインのリフレッシュ作業を行うことになりました。
  • 搭載されている302cid V8エンジンは、ガレージ到着後補機類のリフレッシュ作業など、通常のメンテナンスを行い仕上げることに。
  • トランスファーケースはオリジナルを活かしてオーバーホールを施しました。
  • まずはトランスファーケースのオーバーホールから取り掛かります。すべて分解し、ベアリングなどシール部分のパーツを新品に交換し、ギア類も損耗状況をチェックして、必要に応じて新品パーツへと交換します。
  • エクステリアが仕上がったミッドナイトブルーブロンコです。トランスファーケースのオーバーホール後、インテークマニホールドを交換し各ゲージ類の作動調整を行った後、Upholsteryショップへと移動しました。
  • OEMのニューホイールにCooper製ホワイトリボンタイヤをチョイスしています。
  • ターンシグナルレンズは前オーナーの好みにより'68年式までの前期型に変更されていますが、当ガレージではあくまでもオリジナルにこだわり後期型へと交換します。本国アメリカでは前期型の人気が高く、こういったモディファイを受けた個体をたまに見かけることがあります。エクステリア&駆動系の作業が終了したミッドナイトブルー号は、いよいよインテリアのリファイン作業へと入ります。
  • 前オーナーによって塗装されたステアリングコラムベゼルや左右のインナードアパネルは新品に交換しています。
  • 前後シートはきれいな状態ですが、当ガレージのレストアプロジェクトの名に恥じない仕上がりを実現する為ため、表皮貼り替えることにしました。カーペットも新品に貼り替えます。
  • インテリアのリニューアルのため、全てのインテリアパーツが取り外されました。高温多湿な日本での使用を考慮し、フロアは下地処理の後防腐処理のためのコーティングを行います。
  • 下地処理が行われサフェーサーが拭かれた状態です。この上からLine-Xコーティングを施していきます。
  • コーティング後の状態です。乾燥させてからボディと同色のミッドナイトブルーへとペイントします。
  • Line-Xコーティングの上にボディと同色のミッドナイトブルーを拭いてフロアの防腐処理が完了です。この上にカーペットを貼るため、フロアは直接見えない部分となりますが、見えない部分も手を抜かずにこだわることでクオリティを高めていくのです。
  • フロアパン部分の仕上がりも上々です。
  • 内装のリファイン作業を終えたミッドナイトブルー号です。カーペット、シートスキン、ドアパネル、ヘッドライナー、ワイパーモーターカバー、サンバイザーなどすべての内装パーツが新品へと交換されました。
  • リアクォーターパネルも貼られ、ブラックのカーペットと相成ってグッと上質な雰囲気になりました。
  • ここからは、ガレージでの作業となります。まずは、下まわりのクリーンナップ。大まかな汚れはアメリカで落とされていましたが、さらに細かな部分まで手を入れていきます。写真はフロント周りですが、ハウジングやフレームなどひと通り洗浄&磨きをかけた後にシャシーブラックで整えています。
  • 前後のドライブシャフトは取り外して清掃。ユニバーサルジョイントの中もワイヤブラシで汚れを落とします。さらにグリスアップすることで若干動きの渋かったジョイントもスムーズに動くようになりました。ちなみに、上がリア、下がフロントのドライブシャフトです。前後ともダブルカルダンジョイントが採用されています。
  • 燃料タンクを取り外し、ボディフロアの下面も汚れを落としました。燃料タンクも一度地をだしてからリペイント。綺麗に仕上がりました。ホース類も新しいものと交換します。
  • こちらはブランニューのサブタンクです。ホース類も新品へと交換して取り付けます。
  • サブタンクは運転席の下に備わります。ボディ側も綺麗に掃除を行い、シャシーブラックで表面を整えて取り付けの準備完了です。
  • 装着終了のカットです。樹脂製のサブタンクはスチール製のタンクガードでシッカリと保護 2本のベルトでボディからタンクを吊るして固定しています。
  • エンジンルームのクリーンナップに伴い、エアクリーナーボックスとバルブカバーをリペイントしました。
  • まずは元のペイントをしっかりと剥がし塗装面を整えます。
  • クリーンナップ後に、フォードブルーにペイントしました。濃淡の違いで2色ラインナップされているフォードブルーですが、今回は濃いブルーをチョイス。この後クリアを噴いて磨きをかけます。2度3度と重ね塗りをすることで、深い艶のある仕上がりになりました。
  • しっかりと磨きを掛けたのちエンジンルームに戻します。エンジンルームの狭いブロンコは、エンジンの真上にエアクリーナーが設置できないため、このボックスでオフセットしてエアクリーナーを設置しています。
  • エアクリーナーボックスにはエンジンの排気量を示す“302 CUBIC INCHES”のデカールも貼り付けました。エンジンルーム内でかなり存在感を発揮しているパーツだけに、綺麗になるとエンジンルームが華やかになりますね。
  • エンジンルームの整備を進めている1976 Bronco Sport 今回はクーラントのオーバーフロータンクを設置しました。このボックスはラジエターの内圧が上がった時にクーラントを一時的に避難させるものです。
  • ラジエターもオーバーホール&ピッチ増ししたものへと交換し、冷却効果をアップしています。これで夏場でもエンジンを安定して冷やすことができます。
  • シフトレバーソケットをステアリングシャフトへ固定する部分にクラックが入り、砕けてしまっていました。これではスムーズにシフトレバーが動かすことができないので交換します。
  • シフトレバーソケットを取り外すにはステアリングコラム周りのパーツをすべて外さなくてはいけません
  • ステアリングコラムを分解したのに伴い、消耗品のひとつであるターンシグナルスイッチも新品へと交換しました。このパーツはシフトレバーソケット内に収まっています。
  • 新しいシフトレバーソケットにシフトレバーを固定してステアリングコラムへと戻します。
  • シフトレバーをコラムへと戻し、シフトインジケーターやステアリングを取り付けて完成です。シフトレバーもスムースに動くようになりました。
  • 日本での仕上げ作業を進めている間に、エンジンに不具合を発見。急遽リビルトエンジンへと載せ換えることに。
  • エンジン降ろしに伴い、ミッション&トランスファもブロンコから降ろしました。ミッションジャッキをあてがいがらゆっくりと…。
  • 無事に降ろすことができたミッション&トランスファ。かなりHeavyで、大人ふたりでやっと持ち上げられます。
  • ミッション&トランスがなくなりスッキリとした下まわり。この機会に手の届かなかった部分もクリーニングを行いました。
  • 一方、エンジンはラジエターやパワーステアリングポンプ、オルタネーターなどの補器類をすべて外します。
  • エンジンマウントを切り離し一気にエンジンルームから引き出しました。
  • こちらがブロンコから降りたエンジンです。
  • エンジンがいなくなったブロンコのエンジンルーム。クリーンナップ開始!
  • エンジンルームに体ごと入り、今まで手の届かなかったところまで綺麗にしました。
  • エンジンルームのクリーニングが仕上がったら、いよいよニューエンジンの出番。クレーンで吊られて準備万端!
  • アメリカ車のなかでは比較的小さなボディのアーリー・ブロンコ。ゆえに、302cidのV8でもあまりスペースに余裕がなし。微妙にエンジンを動かしながらフレームにしっかりと固定しました。
  • 無事にエンジン固定終了。何もないときは広々としていたエンジンルームでしたが…。この後補器類の取り付けを進めました。
  • エンジンの点検をひととおり終え、ラジエターやオルタネーター、エアクリーナーBOXなどを取り付けて元の姿を取り戻した302エンジン。この後火入れの儀式です。
  • 火入れの儀式を始める前に、ミッション&トランスファをブロンコに戻します。
  • 無事定位置へと戻ったミッション&トランスファ。
  • エンジン載せ替え後の初火入れも無事に終了し、キャブや点火系のセッティングを行いエンジン載せ換えの作業はひとまず終了。